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『【推しの子】』が現代人の心に刺さるワケ

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
©赤坂アカ×横槍メンゴ集英社推しの子製作委員会

美しい夢を見せ続け、クリーンなイメージを守り続けることがアイドルの仕事だ。そう思うと、どれほどSNSが発達して時代が変わろうと、アイドルという仕事は本質的には太古の昔から存在する、神事のような特殊な職業だといえる。

現に私自身、好きなアイドルグループの推しを見ると、文字通り「拝みたい」「神々しい」と口にすることもある一方、ライブに集まったファンが喜んで必死にペンライトを振る姿に、誤解を恐れず大胆に言えば、神を崇めるために教会に集まり、祈りを捧げる宗教と同じ構造を見出しもする。

アイドルというのは決してちやほやされるだけの楽な職業ではなく、むしろ、ファンに偶像視されてちやほやされることに意味がある仕事。アイドルは、全身全霊でファンの“神様”であろうとするプロフェッショナル意識を持った誇りある人々なのだ。

とはいえ皮肉なことに、完全無欠と謳われたアイも、最後には殺されて血を流して死んでいく。いくら偶像崇拝の対象といえども、一人の人間であることには違いない。

これは今の令和のアイドルも同じことで、どれほど夢を見せていても、ステージを降りれば毎日の生活があるし、時にはSNSの誹謗中傷で傷つくこともある。血だって涙だって出るのだ。

さらに言うならば、一般人の私達も同じである。学校や会社の自分、友達と会う自分、親の前での自分…といくつも仮面を持っているはずだ。究極的には、規模の大小はあれども、生きている限り誰しも偶像と嘘は持っているのである。

『【推しの子】』は、アイドルの光と闇を描くことで、そんな令和の今を生きる私達に疑問を投げかけ続けてくれている。

(文・唐梨)

【作品情報】
タイトル:【推しの子】
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:平牧大輔
シリーズ構成・脚本:田中仁
出演:高橋李依、大塚剛央、生駒ゆりえ、潘めぐみ、石見舞菜香、大久保瑠美、伊東健人、高柳知葉、内山夕実
主題歌:YOASOBI「アイドル」、女王蜂「メフィスト」

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