作品の底に流れる奔流のモチーフ
【図2】『サマーウォーズ』細田守監督、2009年(DVD、バップ、2010年)
たとえば温泉の描写ひとつとっても、そこには周到に張り巡らされた伏線とその回収の妙を見てとることができる。奔流のモチーフが劇中で描かれるのはこれが初めてではない。観客は映画の序盤に水道管から迸る大量の水を目にしているだけでなく【図2】、後半で敵を追い詰めた際にもやはり同様の光景を目の当たりにしている【図3】。温泉の湧出は、これらのヴァリエーションとして終盤に出現する三度目の奔流である。
【図3】『サマーウォーズ』細田守監督、2009年(DVD、バップ、2010年)
あるいは鼻血(翔太→健二→健二)や涙(夏希→佳住馬→了平)といった人体から流れ出る液体もひとつの主題系を形成しており、ほかの主題系と響き合いながら、壮大な交響曲を奏でている。こうした主題系の基調音となっているのが大小さまざまな「三回の繰り返し」なのである。