『サマーウォーズ』の「戦争」の描き方
【図4】『サマーウォーズ』細田守監督、2009年(DVD、バップ、2010年)
看板に偽りなし。『サマーウォーズ』はタイトル通りいくつかの「戦争」を描いている。
ハッキングAI「ラブマシーン」と陣内家とのあいだに戦われた「第三次上田合戦」がその中心を占めていることは言うまでもない。
ラブマシーンによるOZの混乱を眼前にして、陣内家の16代当主である栄(富司純子)は「まるで敵に攻め込まれているみたいじゃないか」と言い、レスキュー隊に所属している孫の克彦(板倉光隆)に励ましの電話をかけた際には「これは戦(いくさ)だよ」と明言する。
また、ラブマシーンの側でも陣内家を自らの敵として認識するようになる。このことは、家紋を介した序盤のシーンからうかがえる。混乱に陥ったOZの世界が常態に復しつつあるなか、ラブマシーンはその原動力となった陣内家の家紋(真田家の結び雁金をアレンジした紋様)を見据える【図4】。
続くショットで家紋のクロースアップが映し出され、さらにそれが家紋を背負いながら関係各所に激励の電話をかける栄の後ろ姿のショットへと引き継がれるのである【図5】。
【図5】『サマーウォーズ』細田守監督、2009年(DVD、バップ、2010年)S
語義矛盾めいた言い方になるが、この戦争は長野県上田市に本拠を構える(真田家をモデルに仰ぐ)陣内家にとって三度目の“大一番”である。
徳川軍を相手に戦った第一次上田合戦と第二次上田合戦の顛末は、劇中で陣内万助(永井一郎)の口から語られている通りであり、「多勢に無勢」の戦いを挑む構図は今般にも共通する。また、第二次上田合戦の際に採用された戦術は、ラブマシーンとの二回目の戦闘に取り込まれている(この戦闘については後述する)。