『七人の侍』を連想させる第三次上田合戦
さて、第三次上田合戦はラブマシーンとのおおむね三回の「局地戦」によって構成されている。この三回の戦闘を取り巻くようにして、さまざまな「三度の繰り返し」が描かれていくのである。たとえば本作の準主人公格たる池沢佳住馬(谷村美月)のアバターであり、OZ内の格闘ゲームのチャンピオンとして知られているキングカズマは、ラブマシーンと三度相対することになる。
最初の対戦では、健二のアカウントを乗っ取ったラブマシーンを圧倒し、一度は捕らえるものの、他のアカウントを吸収して変化(へんか/へんげ)したラブマシーンにKOされてしまう【図6】。
超スペックの機材を取り揃えて臨んだリベンジマッチでは、祖父かつ師匠の万助(永井一郎)をはじめとする親戚の力を借りつつ、ラブマシーンを城塞化したOZのメイン棟に閉じ込めることに成功する。
このときの戦略は、第二次上田合戦から想を得て健二が立案したものである。同時に、直前のシーンでセリフ(「人を守ってこそ、己を守れる」)が引用されていた『七人の侍』(黒澤明監督、1954年)を連想させる戦い方でもある。しかし、スーパーコンピューターの熱暴走によって生じた綻びから、ラブマシーンに脱出を許してしまう。四億ものアカウントを取り込んで巨大化し、さらにキングカズマのアバターをも吸収して三度目の変化を遂げたラブマシーンが、三たび陣内家の前に立ちはだかる。
ラブマシーンが取り込んだアカウントのなかには小惑星探査機あらわしの管理者権限を持つものが含まれている。ラブマシーンはそれを悪用してあらわしを操り、地球上に存在するいずれかの原子力発電所(核施設)に落とそうと目論む。落下までの猶予は二時間ほどしかない。
もはや絶体絶命の状況だが、健二は諦めない。数学と同じで「諦めたら解けない、答えは出ないままです」と言って打開策を考え続ける。この姿勢は映画の前半で、OZの混乱に際して栄が口にしていた「諦めなさんな、諦めないことが肝心だよ」という言葉へのアンサーになっている。決して諦めようとしない健二の姿に感化されて、夏希(桜庭ななみ)も動き出す。ラブマシーンの開発者である侘助(斎藤歩)に連絡を取るべく、彼が残していったiPhoneのパスコードを解こうとするのである。