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NHK朝ドラ『虎に翼』が期待以上の傑作になったワケ(4)昭和の男性社会で活躍した「男装の麗人」とは?

text by 田中稲

各所で好評を博している、伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。本作は、日本初の女性弁護士になった人物の情熱あふれる姿を描く。物語は終戦を迎え、6月から新章がスタートした。今回は、放送開始から2か月にわたる物語を当時の文化史と共に振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】

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【著者プロフィール:田中稲】

ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。

社会で活躍した「男装の麗人」たち

連続テレビ小説『虎に翼』©NHK
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 他にも、日本初の女性映画監督の坂根田鶴子(1904年~1975年)も、当時スタッフはほぼ男性しかいなかった映画界に飛び込んだ。そのため撮影所で動き回るためズボンをはき、照明の強い光や落下物を避けるため帽子を着用。

 このスタイルが定番となり、男装の麗人として知られるようになった。彼女が初監督をした『初姿』(1936年)について、批評家は「女らしい感性の細かさを期待してみたが、それはどこにも見あたらない」。プロがよくそんな偏った感想を出せたものだとびっくりするが、当時の社会で、女性が公平な評価を得るのがどれだけ難しかったのか、非常によく分かる言葉である。

 また、女性飛行士、木部シゲノ(1903年~1980年)も20歳から男装を通し注目を浴びた。172センチという長身にロイド眼鏡、背広にネクタイを愛用し、ブロマイドを販売されるほどの人気だったという。

 女性に人権がほぼない時代、男装をし、社会に飛び込んだ彼女たち。そこには、男性並みの自由や働く権利を得るため、また、男性からの性暴力を回避するためなど、様々な目的があったことだろう。

 『虎に翼』でよねさんは、父親に売られかけ、「女をやめる」と宣言し、男装を始めた過去を話している。さらには愛想笑いを封印した態度により、司法試験を落ちまくってしまう。それでも自分のスタイルを貫き、いつの間にか、カフェで女性の法律相談に乗るなど、自分のやるべき役目や場所を作っていったのだ。素晴らしい!

 寅子と仕事の良き相棒になると思っていたのに、ケンカ別れしたまま戦争になり、安否がわからないなんてつらすぎる。再登場し、寅子とまた顔を突き合わせ、法律の論議をするシーンが出てきますように。そして願わくば、兵役から無事戻った轟(戸塚純貴)も、その輪にちゃっかり入っていますように……。

(文・田中稲)

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