NHK朝ドラ『虎に翼』が期待以上の傑作になったワケ(6)岩田剛典”花岡”のモデルの壮絶な最期とは…?
各所で好評を博している、伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。本作は、日本初の女性弁護士になった人物の情熱あふれる姿を描く。物語は終戦を迎え、6月から新章がスタートした。今回は、放送開始から2か月にわたる物語を当時の文化史と共に振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
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【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
岩田剛典が演じた花岡のモデルとは?
6月からはいよいよ「裁判官編」がスタートしているが、史実と照らし合わせ、気になるのが花岡悟(岩田剛典)の今後である。
花岡は直言が死に際で「花岡君が良かったなぁ」と呟くほどの、顔良し、頭良し、家柄良し、性格良しの罪な男である。
この花岡のモデルは、終戦後、主に闇米等の食糧管理法違反を担当していた裁判官、山口良忠氏という説がある。この山口氏はとても真面目な人で、法律で禁止されている闇米を、法の番人である自分が食べてはいけないと拒否。配給のほとんども子供に分け与え、33歳で餓死してしまう。
そ、そんな……。いやいや、あくまでもモデルで、花岡さんは大丈夫だろう。サブレギュラーとして今後も時折佐賀から上京し、寅子のよき相談相手になってくれる……と思いたい。ただ、気になるのが、5月16日(木)回で、寅子の前で婚約者の奈津子(古畑奈和)を紹介したことを轟に問い詰められた時の花岡のセリフである。
「もう決めたんだ。ここからは奈津子を誠心誠意愛して、何も間違わず、正しい道を進むと誓うよ」。
このときの「何も間違わず」という言葉が、気になって仕方がない。寅子への罪悪感からくるこの約束が、彼の生き方を、あまりにも極端な「正義」へと向かわせたとするなら……。
いやいや、私のカンは当たらない。戦争を生き抜き、寅子と再会する、轟、よねさん、そして花岡の笑顔を見られることを願っている。
(文・田中稲)
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