気持ちを雄弁に伝える手の働き
社会で生きていると“言葉にしないと伝わらない”といわれることは多いし、“相手に対して自分の気持ちを言葉で伝えてみるように”と助言されることは少なくない。しかし、「目は口ほどに物を言う」という諺があるように、口だけが自分の思いを伝えられる身体の部分ではない。また、「口がうまい」という慣用句には話上手という良い意味もあるが、欺瞞的な側面も含んでいる。
広海(佐野勇斗)は「僕は 手って 口と同じくらい 言葉を持ってると思う 手を振れば またねって 誰かの手を握れば ここにいるよ 大丈夫だよって気持ちが 伝わると思う たとえ 言葉にできなかったとしても」と、優希から病の母になんにも言えなかった過去を打ち明けられると返していた。
広海がいうように、手をにぎられると大丈夫だよっていう気持ちになるし、ひとりじゃないと安心できることがある。あなたは大丈夫だよって言葉巧みに説明されるときよりも。
優希が手元においていた母の遺骨を海に撒くときも、彼女の背中を押したのは広海、虎之介(望月歩)、愛莉(見上愛)、まひる(吉川愛)の手だった。
また、拓郎(平山浩行)や優見(菅野莉央)は優希の心の格闘も母や自分たちへの愛情も家族として感じ取っているからこそ、あたたかくそっと見守っていた。すこし離れた場所からあたたかいまなざしで見守るのも愛情表現の1つである。