長崎原爆が描かれた第4話
第4話では、白血病を患っていた百合子の母親・寿美子(山本未来)が亡くなる。それをきっかけに、幼少期、百合子が遭った悲惨な体験が語られていく。彼女が朝子に冷たいのは、当時朝子の小さないたずら心で、気乗りしなかった長崎・浦上で行われるカトリックの集会に行くことになってしまったからだった。そこで百合子たちは原爆の被害に遭ってしまう。
これまで、単にプライドの高い性格で、年下で愛されキャラの朝子に嫉妬している意地悪娘なのだと思い込んでいたので、観ながら心の中で百合子に謝るしかなかった。朝子を守るために絶対当時のことを言わない。でも壮絶な記憶は、朝子の顔を見るたびに思い出される。だからいじめてしまう――。
猛烈な怒りや哀しさを乗り越え「ゆるし」へと向かう、土屋太鳳の演技はすさまじい。彼女の少しやせた頬が、説得力を倍増させている。
史実を見てみると、8月9日に落とされた原爆「ファットマン」は浦上地区上空で爆発。ここは長く続いたキリスト教弾圧の期間(1614~1873)、隠れキリシタンによる信仰の拠点だった。
「東洋一の聖堂」と言われる浦上天主堂もあり、周辺にはカトリック教徒が多く住んでいた。長崎原爆では、約4万人、カトリック信徒8500人が命を落としている。
カトリック教徒に課せられた受難、という母親の考えに「傲慢だわ」と呟く百合子。被爆した百合子には、信仰の重さと後遺症の恐怖がまとわりつく。きっと戦争の呪縛からも解放されることはない。だからこそ、第6話で賢将がプロポーズするシーンに漂う「思いやりに溢れた軽い会話」は涙が止まらない。
賢将が指輪を差し出した時、「なんで指輪なの」と聞く百合子に、「それを聞くかね」と飄々と答えるシーンは素晴らしい。
この『海に眠るダイヤモンド』は、ヘンにかしこまらず、話し口調や受け答えが若者らしくライトなのがとてもいい。リナが「今がいっちゃん幸せ」と朝子と百合子に言うシーンもあったが、「いっちゃん(一番)」っていいなとジンとした。彼らの瑞々しい気持ちの高ぶりとか心の揺れが届いてくる。