あのちゃんへの告白シーンが尊い…裏切り者疑惑が消えないワケ。残された不穏な要素とは? ドラマ『民王R』第7話考察レビュー
遠藤憲一が主演を務めるドラマ『民王R』(テレビ朝日系)が放送中。本作は前作『民王』から9年ぶりの続編。池井戸潤の原作をインスパイアし、総理大臣が全国民を対象に、心と体が入れ替わる痛快政治エンターテインメントだ。今回は、第7話のレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
政界も芸能界も根回しが9割!?
早いもので、もう7回目の入れ替わり。12月4日に放送された『民王R』は、武藤泰山(遠藤憲一)が、ドラマ制作のセカンドプロデューサーで、妊婦の月本茜(武田梨奈)と入れ替わった。
その前に、久々に、翔君(菅田将暉)がナレーションで漢字の誤読をしたのが、なんだか嬉しい。「暗雲」を「くらぐも」。「紆余曲折」は読めるのに、なぜそこを間違うのか。いやもう、そんなチグハグさがまた、翔君あるある…。
彼はスペインで有機農法の研究、頑張っているのだろうか、と、ドラマが始まる前からしみじみしてしまった。もはや親戚の気分である。
さて、今回の入れ替わりさん、月本は、泰山チーム的には、7回の入れ替わりさんのなかでも最も万能な当たりガチャとなった。
「プロデューサーの仕事は9割根回し」と豪語するだけあり、大物政治家との交渉が非常にうまい。いつもは、入れ替わりが起こると、説明やらなんやらでゲッソリになるカリヤン(金田明夫)も今回は大喜び。どの世界も笑顔と駆け引きトークはお役立ちスキルすぎる。
一方、月本と入れ替わった泰山は大忙し。月本は自分で企画したドラマが大幅に設定を変えられ、主演女優の神崎塔子(橋本マナミ)が降板すると言いだしていた。
最初こそ、大ファンの神崎塔子に会えると浮足立っていたものの、次第に上司との板挟みに悩まされ、さらには妊娠後期の体で、思うようにいかない。
泰山の姿で「すみません、すみません」と謝るばかりの月本の姿は胸が痛くなる。そして彼女は「(妊娠していても)迷惑を掛けているのは間違いないから」と、「おなかに赤ちゃんがいます」マークをカバンからそっと出すのだ。
母親として、その身を守るためにつけるものと思っていたキーホルダーが、このシーンで、まるで「迷惑をおかけします。先に謝っておきます、すいません」のマークに見えてしまった。
そんなにまで肩身が狭くなる、妊娠しないとわからない大変さ、周囲の目、不便さ。わからないで済ませてはいけないことがある、と思い知らされる。