物理準備室のドアが、学会発表の舞台の上に繋がっていた…。
いよいよ迎えた本番当日。藤竹に「好きな格好で」と言われた通り、岳人と佳純、アンジェラ(ガウ)はいつも通りの格好で、長嶺(イッセー尾形)はスーツに身を包んでやって来た。制服姿の生徒が多い会場では、4人の姿は異質だ。
だけど、それに引け目を感じず堂々と立っていられるのは、ここまでの経験が力になっているからこそ。
壇上に現れた岳人と佳純から、緊張感が伝わってくる。司会から学校名を読み上げられ、「定時制」に会場内はざわついていた。しかし、臆することなく岳人は「教室に火星をつくることに成功しました」と話し出し、空気を掌握した。
堂々としてはいるが、いつもより少し上ずったような岳人の声色に、思わず、頑張れ…!と祈ってしまった。
まるでバトンのように岳人から佳純に話者が引き継がれ、重力可変装置から火星の土の再現の話に。木内に言われた通り、佳純はしっかりと声を張り、前を向いて話す。みるみる聴衆の耳目を惹きつける2人がなんとも頼もしかった。
発表も終盤、岳人が急に黙る。なにかを追いかけているような表情に見えたが、このとき、岳人は「終わりたくない」と思ったと語る。藤竹が誘った物理準備室のドアが、学会発表の舞台の上に繋がっているなんて、誰が想像しただろうか。