全てがピタリとハマっていた傑作

『宙わたる教室』 最終話©NHK
『宙わたる教室』 最終話 ©NHK

 もともとは藤竹が“実験”のためにはじめた定時制高校の科学部。最初は藤竹が「諦めたものを取り戻す場所」と部員たちを“その気”にさせて突き動かしてきたが、いつしか藤竹自身も彼らに励まされるようになっていた。そして、“その気”の先で、学会での口頭発表のみならず、優秀賞まで受賞した。

 しかし、歓喜に湧く部員たちのなかで、佳純だけは悔しさに涙を滲ませていた。「最優秀賞が欲しかった」と言う佳純に対し、長嶺たちは「また来年だな」と笑顔を浮かべる。

 人の探求心は尽きない。岳人もまた、壇上で「これからやりたいことがいっぱいある」と語っていた。藤竹が与えた“その気”が、それぞれに芽吹き、ぐんぐん育っている証拠だろう。

 そして、藤竹自身にも魅力的な誘いがきていた。学会発表を控える大事な時期に、時折物思いにふける様子を、岳人だけは見逃さなかった。そして、帰り道に「迷ってんなら気にすんな。ワクワクは止められない」と声をかける。

 教師と生徒というよりは、まるで同じ道をともに歩んできた同士のよう。握手を交わす2人の関係性が、このままずっと変わらずにいることを願いたい。

 これにて、多くの人を魅了した『宙わたる教室』が完結した。練られた脚本、力強い主題歌。窪田正孝にイッセー尾形という技巧派が屋台骨となり、それを温かく包み込むガウの空気、小林虎之介や伊東蒼といった実力派若手俳優の熱演…すべてがピタリとハマっていた。

「諦めたものを取り戻す場所」という藤竹の言葉に勇気づけられ、その気になれば変わっていける岳人たちの姿に背中を押された人も多かったはず。ままならない世の中に、ピュアな原動力を与えてくれる作品だったと言えるだろう。

(文・あまのさき)

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