乙丸(矢部太郎)の機転と優しさ
また第47話は、周明が前回訴えたように、まひろの人生がまだ終わっていないことを実感するエピソードでもあった。
周明と別れた後、大宰府の政庁に戻ってきたが、悲しみが癒えないまひろに隆家(竜星涼)は「周明のことは無理に忘れずともよいのではないか。 ここで菩提を弔いたければ、ずっといてもよい」と寄り添う。
それはまひろにとっては何よりもありがたい言葉だったが、刀伊は隆家率いる武士団に撃退されたものの、またいつ体制を整えて襲ってくるかわからない状況。それでも太宰府に留まろうとするまひろに、乙丸は「お方様!私はきぬに会いとうございます!」と訴えかける。
まひろが「ならば乙丸だけお帰りなさい」と突き放しても、乙丸は言うことを聞かず、「お方様も一緒でなければ嫌でございます!」「きぬに会いたい!お方様と帰りたい!」と絶叫。幼い子供のように駄々をこねるその姿は側からみるとおかしいが、本人にとっては切実だ。
なぜなら、乙丸は目の前でちはや(国仲涼子)を失った過去があるから。従者として何もできなかった後悔を、乙丸は以前まひろに語ったことがある。だから、今度こそまひろを絶対に守り切りたかったのだろう。
だけど、どれだけ自分を大事にしてほしいと言っても今のまひろには通じない。そこで一世一代のわがままを発動し、まひろに仕方ないと思わせた乙丸の機転と優しさに心が暖かくなった。