相反する対応から見てとれる牧野の成長
牧野にかけられた言葉や、元気になったらキャッチボールをすると約束をした直明手術を受けることを決心。直明の手術は無事に成功し、牧野が病室を訪ねると、またも直明から医師にとって難しい問いかけがなされる。
「僕の心臓良くなるよね?」。すると、牧野は聴診器を取り出し、心臓の音を直明に聞かせる。「もう少しの辛抱だ。焦らずしっかり治せ」という言葉に嘘はないが、思いやりには溢れている。
直明に対しての2つの異なる対応は牧野の成長を如実に物語っていたのではないだろうか。ここまで牧野のひとつひとつの言葉や動きをつぶさに観察したくなるのも、松下が心中を表現するかのような芝居を見せ続けているから。
前述の、直明が「絶対?」と聞き返した時には、一瞬の間をもって返答しているが、医師として答えるべきかの葛藤を抱えていたのだと想像するのは容易だった。
「キャッチボールできる?」という約束に対しても目を泳がせながら「練習しとく」と答える姿は、牧野というキャラクターの芯をぶらさずにいながら可愛げも感じさせてくれる。