ギフトってなんだろう?
広海は特別な才能を与えられて生まれてきたゆえに心がつらくなることもあった。彼は小学生の頃から周囲になじめなかったこと、後ろ指を指されるようなこともあったと過去に話していた。
広海がアメリカに留学することと優希や虎之助(望月歩)らと離れてひとりになることを結びつけるのは、彼は孤独を心に秘めているからだと思う。孤立を知っているからこそ、心の距離ではなく、物理的な近さを求めてしまうのだ。
広海は担当教授の義弘(勝村政信)に問題を解いている途中に「僕って特別ですか?」と質問した。広海から突然投げかけられたこの意味深長の質問に義弘は「今 こうやって 数学に向き合っていて 楽しいですか?」と問いかけた。広海が「はい もちろんです」と答えると、「それですよ 君のギフトは」と答えた。
広海は優希が言うような高価な紅茶を飲むことは望んでいないはずだ。それよりも、大切な人や仲間たちと一緒に街中にあるカフェで数百円の紅茶を飲みたいと考えているだろう。あるいは、現在のように、ファミレス・サンディッシュで5人で他愛のない会話をする日々が愛おしくてたまらないはずだ。
そんな広海に贈られたギフトとは“数学を楽しいと思えること”という義弘の言葉はあたたかく、彼の心を穏やかにしたに違いない。自分にとって心から楽しいと思えるものがあるのは幸せなことである。
さらに、義弘は「きっと いるんでしょうね 君が ギフトを見失わないように 包み紙で包み リボンをかけてくれた人が」「ギフトは 包装されているからこそ ギフトだと認識できる」という言葉を添えた。広海は孤独をギフトによって感じたこともあったが、今はそのギフトを優しく包み込んでくれる優希がいるのだ。