“進平ロス”を引き起こした斎藤工の演技力
それぞれに愛した人を亡くした過去を持つ2人。罪を共有したことによりさらに加速していく気持ちは止められない。暗い海を前にしたキスは、信じられないくらいにロマンチックだったが、一方でこの幸せは長くは続かないのだろうことが予感され、どうしようもなく寂しくなった。
その後、進平とリナの間には子ども(誠)が生まれるが、籍は入れず、ゆえに出生届も出せなかった。端島という閉鎖空間で生きていくならば、当面はそれでも問題ないと考えてのことだった。
だが、その問題を解決せぬまま、進平は坑内火災で命を落とす。一度は栄子の幻に誘われそうになりながらも、リナと誠の姿を思いなんとか生きようとした。
リナと出会わなければ、誠がいなければ、栄子の幻を見た時点で、進平は抗うことなく命を手放していたかもしれない。さまざまな修羅を潜り抜けてきた男が、生への希望に手を伸ばすさまは圧巻だった。