リアルな現場と向き合い続けてきた牧野(松下洸平)
睡眠障害や場面緘黙などは当然すぐには治らない。長く付き合いながら向き合っていく必要があり、快方に向かうかは本人と周りのサポート次第だ。最終話で登場した、過去の患者・真琴(三浦綺羅)にしても、「胸の痛み」を抱えている。
すぐには原因がわからない症状で、彼と家族の関係性を考えてメッセージを送ることで、少しずつ前を向かせることに成功した。ただ、誤解を恐れずに言えば、まだ真琴は普通に学校へ行くことができるようになったというスタートラインに立っただけ。母親のいない中、どのような学校生活を送っていくかはあくまでも視聴者の想像に委ねられている。
そんなリアルな現場と向き合い続けてきたのが小児科医の牧野(松下洸平)。口も態度もでかい牧野は、第1話で「保健室にはなるべく来ないでもらいたい」と児童たちに言い放つ。もちろん、それは子供たちに健康でいてほしいという気持ちの裏返し。
最初は子供たちに恐れられてしまうが、嘘のない牧野に対して徐々に児童も心を開いていく。その過程は一切の無理がなく描かれており、確かに子供を子供扱いせず、これだけまっすぐに寄り添ってくれたら、子供たちも懐いていくんだろうなと思わされる。
だから、小学校を卒業したばかりの、彼らが再び小学校の保健室を訪れて牧野と再会する場面にも思わず頬を緩めてしまう。卒業式の日に人知れず先に学校を後にしていた牧野と児童たちがしっかりと再び顔を合わせるシーンは、どちらかというとドラマっぽい演出だが、それだけ牧野が子供たちから慕われていたと示すには十分すぎるものだった。