第10話「月夜の陰謀」の素晴らしさと直秀(毎熊克哉)の可愛らしさ
本作には美しく、清らかなラブシーンがいくつも挿入されているが、特に第10話「月夜の陰謀」におけるシーンが心に残っている視聴者が多いようだ。月の下、道長は藤原家を捨てる覚悟を決め、まひろを海の見える遠くの国に誘う。「俺はまひろに逢うために生まれてきたんだ!」と言い放つほど道長はまひろに惚れきっている。
一方で、ふたりの関係は甘美なものにとどまらない。まひろと道長は夫婦として寄り添い合うのではなく、直秀(毎熊克哉)のような死者を出さないために世の歪を正すために力を合わせる。
まひろは道長との結婚は実現しなかったものの、自分の力で自身の役割を見つけ、「光る君へ」の物語を完成させ、越前で抱いた美しい紙に文字を書きたいという望みも現実のものとしている。女性の幸せが結婚だけではないといわれる昨今の価値観が作劇に無理なく取り込まれているのに感心した。
また、上述したように本作の「少女漫画的」な雰囲気は、作品を魅力的にすることに大きく貢献している。とりわけ、毎熊克哉が演じた直秀がまひろと道長を屋根の上から見守る姿はまるで少女漫画の一コマのようだった。彼の存在を恋のキューピットに重ねた視聴者も少なくないのではないか。