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平安貴族の物語に視聴者が自身を重ねる魅力

『光る君へ』最終話より ©NHK
『光る君へ』最終話より ©NHK

『光る君へ』の登場人物は、1000年以上前の平安貴族がモデルとなっているが、意外なほど、視聴者は彼、彼女らに自分を重ねることができるし、劇中のセリフが助言のように聞こえることもある。

 例えば、夫をもつ女性は道長とまひろの関係を見守るしかない倫子のつらさがわかるだろう。夫を一途に愛し、敬い、家の繁栄に貢献しているのに振り向いてもらえない悲しみ、他の女性との関係を知っていても平穏な日々を守るため、夫のためにと静観するやるせなさ。

 また、さわ(野村麻純)に共感できた女性も多いのではないだろうか。自信をもてず、誰からも愛されていないと感じるところや、魅力的な友人に憧れつつも嫉妬する姿は共感を呼んだ。

 まひろやききょうが抱くジェンダーロールや社会規範に対する違和感、子ども時代の賢子(南沙良)が抱いていた働く母親に対する愛情ゆえの怒り、孤独や世のつらさを宴会や煌びやかな調度品などでまぎらわす妍子(倉沢杏菜)…。

 劇中に登場する貴族たちがまひろの紡ぐ物語に自分を重ねていたように、本作を観る者は『光る君へ』の登場人物の誰かに自分を重ねることができる。それは『光る君へ』が心に残る作品になった理由の1つだろう。

(文・西田梨紗)

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