どこをとっても名作だった『ライオンの隠れ家』
「じゃあ、あとはよろしく」。愛生が姿を消した日に残していった言葉で家を後にする洸人の表情が清々しいのは、これまでの人生を肯定しながら、新しい挑戦へと踏み出すからこそ。
洸人は大学、美路人はアートグループホーム、愁人は小学校。それぞれの門出が、小森家にどんな新しい景色を見せてくれるのかを想像し、ワクワクした。「終わってしまった…」と思うと同時に、「わたしも新しいことをはじめてみようかな」と前を向かせてくれる、そんな作品だった。
自閉スペクトラム症を抱えた美路人という難しい役どころを器用にこなし話題をさらった坂東龍汰や大人顔負けの演技を見せた佐藤大空をはじめ、尾野真千子、向井理、岡山天音という演技巧者たち、シリアスな場面が続く中でくすりと笑える場面をつくり出してくれた岡崎体育、でんでん、平井まさあき(男性ブランコ)、尾崎匠海…そして、その真ん中で受け皿のようでありながら、繊細な感情表現を見せてくれた柳楽優弥。
当たり前だが、誰が欠けてもこの作品は成立しなかった。物語の展開のすばらしさ、キャスティングのハマり具合など、どこをとっても名作といって過言ではないだろう。『ライオンの隠れ家』を観られたことに感謝したい。そして、願わくばまたどこかで、小森家の続きを覗ける日がきますように。
(文・あまのさき)
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