柳楽優弥が魅せた“ふつう”の男性役の新鮮な魅力
他にも魅力は数多くある。出演者の認知度、演技がすばらしかったことは、そのひとつ。
「懸念しているのが、オンエアのたびに僕だけどんどん好感度が落ちていってるので、それを回復する良いアイデアがあれば教えてください(笑)」
クランクアップ時のコメントでそう言っていた橘祥吾を演じた向井理。序盤で「ああ、この人がライオン(橘愁人/佐藤大空)のこと、虐待しまくっていたんだよな」くらいは思っていた。ただその後、大きな出演はほぼないのにもかかわらず、祥吾が存在をチラつかせてくるだけで怖いのである。メインの登場人物とほぼ接触がないのに、陰湿度100%。物語において必要だった。
主人公である、洸人を演じた柳楽優弥の演技もふつうで良かった。これまでの彼の出演作を記憶の範囲で振り返ると『ゆとりですがなにか』(2016、日本テレビ系)の道上まりぶ役で「おっぱい、いかがっスか!」と、風俗の呼び込みをするような強烈且つ、癖のある役が多い気がする。それが今回は市役所の職員という、どこにでもいるふつうの男性。ゆったりとした話し方も新鮮で、お兄ちゃん役はベスポジだった。
そしてライオンこと佐藤大空くんの、自然な演技。SNSでも大活躍で、本当に頑張っていたことが観ている側に染み渡った。その母親・橘愛生役の尾野真千子の演技も安定。複雑な環境下にあった役なのに、本人の明るさが滲み出ていた。トーンの暗い放送回でも、この親子が中和剤だった。
こうしてドラマ全体を見渡すと登場人物のフォーメーションが完璧だったのだとつくづく。