語り継がれる名作に
一方で、真相を知らずに、鉄平と会えずじまいになってしまった朝子の人生は不幸だったのかというと、決してそんなことはない。虎次郎(前原瑞樹)と結婚して、娘と息子を授かり、現代では孫に囲まれて幸せな家庭をもった。大好きな人と一緒になるという夢はかなわなかったかもしれないが、また別の幸せとめぐりあえたという答えは、彼女だけではなく、視聴者にとっても大きな救いだ。
クライマックス、いづみが見た夢の中のような光景で、端島に生きる朝子(杉咲花)が「私の人生、どがんでしたかね?」と問いかける。いづみは「朝子はね、きばって生きたわよ」と笑顔だが、彼女の山あり谷ありの人生を知っている私たちは涙を禁じ得ない。誰が何と言おうと、彼女の頑張りを肯定してあげたい。
最後は、夢のような空間で、端島の朝子のもとに歩み寄った鉄平がプロポーズする姿が描かれ、まさに「ヒューマンラブエンターテインメント」と呼ぶにふさわしいラストだった。
3カ月にわたり紡がれてきたストーリーには敬意を払いつつも、最終話(9、10話)は、その2時間だけを見ても楽しめる映画のような構成で、制作陣のヒントになったという映画『タイタニック』(1997)が思い起こされる。本作が、日本ドラマ界の『タイタニック』として語り継がれることを願ってやまない。
(文・まっつ)
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