映画『誰も知らない』の面影
この「あとはよろしく」という台詞は、洸人が子どもの頃、家を出る愛生から言われたもので、さらには、小森家にライオン・愁人(佐藤大空)が突然現れた際に洸人へ向けられたメッセージでも登場した。それをラストで、今度は、洸人から愛生に向けて放たれる。
「あとはよろしく」なんて日常的によく耳にするような言葉を、ここまで胸に刺さるものに昇華させたストーリー構成の巧みさと、柳楽の演技力にはただただ圧倒されるばかりだ。
さらに「あとはよろしく」の攻撃力をより高めた要因として、柳楽が20年前に出演した映画『誰も知らない』(2004)の影響も少なくない。柳楽は同作でもヤングケアラーとして母親・けい子(YOU)に弟妹の面倒を押し付けられる長男・明を演じた。
ストーリー中盤ではけい子が恋人を作ったために家に帰らず、生活費を現金書留で送るのみで姿を一切見せなくなる。明はヤングケアラーどころか家の主を任され、学校に通うことさえ許されなかった。
明とは状況が大きく異なるが、洸人も姉弟を最優先にしながら人生を歩んでいたことには変わりない。洸人が自分の選択で道を決められ、誰かに堂々と頼るようになった様子に、“未来の明”が重ね合って見え、胸が熱くなった。