尾野真千子が体現した虐待の連鎖

『ライオンの隠れ家』第10話©TBS
『ライオンの隠れ家』第10話©TBS

 この10話のシーンは、岡山の熱演だけでなく、尾野真千子が出演した2015年公開の映画『きみはいい子』のとあるシーンも感動を後押しした。

 同作において、尾野は自身も親から虐待を受けた過去を持ち、現在は母親として娘・あかね(三宅希空)に手を挙げている女性・雅美を演じた。

 劇中、ママ友の陽子(池脇千鶴)に自宅に招かれた雅美とあかね。あかねと陽子の息子がボール遊びをしている姿を、お茶を飲みながら雅美と陽子は眺めていると、あかねがうっかりカップを割ってしまう。

 陽子の手前、感情を抑えようとするも、ついついあかねを睨みつけてしまい、あかねは反射的に泣きわめく。雅美は陽子から虐待を疑われることを恐れて狼狽するも、陽子は「親から酷いことされたよね?わかる。私もそうだったから」と言って雅美を責めずに抱きしめる。雅美を責めずに寄り添う陽子の優しさに触れ、雅美はただただ涙を流した。

 虐待の加害者であるが、かつては虐待の被害者でもある雅美が愛生と重なり、そして愛生が虐待被害者の柚留木を抱きしめる姿には、感慨深さを覚えた。

 最終回を迎えたものの、未だ語り足りない『ライオンの隠れ家』。この“ライオンロス”はしばらく続くことになりそうだ。

(文・望月悠木)

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【了】

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