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対照的に描かれた現代の東京と70年前の端島

『海に眠るダイヤモンド』最終話 ©TBSスパークル/TBS
『海に眠るダイヤモンド』最終話 ©TBSスパークル/TBS

 そんな端島と対照的に描かれていたのが、ホストとして将来のあてもなく暮らしている玲央(神木隆之介)に結婚をせまる謎の老婦人・いづみ(宮本信子)が邂逅する現代の東京だ。

 対比されるのは、真水が持つ価値やエネルギーとして必要とされる化石燃料の違いなど、時代によって変化する環境的な要因だけではない。双方の世界で映しだされる人々の顔を見ると、決して順風満帆な日々とは言えないものの、明らかに不自由で不便なはずの端島に生きる人々のほうが豊かな表情をしていた。

 ホスト業界の利益構造が生みだす過負荷を押しつけられる玲央や、社長の座を巡って争う池ヶ谷家の人々のように、過去と未来に責任を負わせようとする現代パートではとうに薄れてしまった、「今」この瞬間に集中して楽しみを見つけながら、一日一日を生きている人々の姿が端島にはあった。

 それでも物語は中盤から様相をガラッと変える。まるで過去と現代が天秤にかけられているかのように、玲央が今まで頭の上がらなかった先輩ホストに抗う姿を見せたかと思えば、端島では深夜に起きた坑内火災が引き金となり、炭鉱は閉鎖の危機へと陥っていく。

 過去と現代の明暗は入れ替わるようにして、戦後まもない端島が辿った歴史と姿を消してしまった鉄平の行方を紐解きながら、やがて物語は望まぬとも時計の針を進めてしまう。

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