過去が現代を変えて、現代が過去を救う
過去は決して変わることはない。端島が歩んだ栄枯盛衰の道のりも、鉄平と朝子が結ばれることなく人生が分かたれてしまったことも揺るがない事実だ。
それでも鉄平が端島の再興への想いを込めて、朝子と暮らす幸せな未来を夢見ながら綴った日記は、現代に生きる玲央の運命を変えた。
そして、過去に背中を押された玲央が、端島を旅立って以来、故郷に帰ることのできなかったいづみを「戻れないあの島」へと連れていく。愛しい人への思い出とともに、端島の海の底に沈めたいづみの過去を救いだしたのは、間違いなく玲央だった。
物語の冒頭で目の前の現実を直視できずに、ただ流されるままに生きていた玲央が、70年の時を越えて過去と現代をつないだ。それは本作品が魅せてくれた、ダイヤモンドのように輝く希望のひとつだった。
最終話のラストで描かれた島民の笑顔が咲き誇る端島の日常は、あの場所にいた人々だけでなく、ドラマを観ていた視聴者でさえずっと望んでいたアナザーストーリー。
それでも「あったはずの未来」を、いや「あってほしいと願う未来」を描くことができるのはフィクションの特権であり、あの場所で鉄平から「俺と…結婚してください」の言葉を受けとるふたりの朝子が映る場面は、多くの人が待ち望んでいた瞬間でもあった。
だから、あの世界線が実際に端島で紡がれた物語だと、夢見がちでも今は信じていたい。
(文・ばやし)
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