見逃し配信の再生数は歴代最高…NHK大河ドラマ『光る君へ』を名作たらしめた“共感力”とは? 振り返りレビュー
text by 苫とり子
『光る君へ』(NHK総合)が12月15日(日)に最終回を迎えた。これまでの大河ドラマとは一線を画した内容で支持を集めた本作は、配信サービス「NHKプラス」で歴代最高の平均視聴者数を記録、終了しても尚、勢いは止まらない。そこで今回は『光る君へ』が特別な作品になった理由を複数のポイントから解説する。(文・苫とり子)
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
「NHKプラス」での平均視聴数が歴代大河ドラマ最高を記録
『光る君へ』が最終回を迎えて2週間が経とうとしているが、未だ人々の心に余韻を残し続けている。12月24日には、配信サービス「NHKプラス」での平均視聴数が歴代大河ドラマ最高の記録となったことが発表された。
本作は、『源氏物語』の作者・紫式部/まひろ(吉高由里子)の生涯を描いた物語。大きな戦のない平安時代が舞台ということもあり、放送前は地味な大河ドラマになるのでは…と不安視する声も一部上がっていた。だが、世間の盛り上がりを見ても、それは杞憂だったことが分かる。
お茶の間を大いに盛り上げたのは、まひろと藤原道長(柄本佑)の切ないラブストーリーと、スリリングな宮廷での権力闘争だ。時の権力者だった道長と、その娘・彰子の女房として仕えた紫式部。実は恋仲だったという説もある二人を、脚本家の大石静は生涯離れることができないソウルメイトとして描いた。
幼い頃に偶然出会い、互いに素性を隠しながらもすぐに打ち解け合った二人。だが、まひろ の母であるちやは(国仲涼子)が道長の兄・道兼(玉置玲央)に殺害されるという悲劇が起きる。
そのため、成長して再び道長に再会するも、愛する人の母の仇の弟だったという事実に苦しめられるまひろ。それでも二人は惹かれ合うが、まひろは下級貴族の娘、道長は上級貴族の御曹司で、そもそもが結ばれない運命にあった。そういったメロドラマ的要素を盛り込み、とことん二人の恋をドラマチックに演出するところに“ラブストーリーの名手”と呼ばれる大石の手腕が冴え渡る。