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一人として完璧な人などいなかった

『光る君へ』第40話より ©NHK
『光る君へ』第40話より ©NHK

 大石がかつて手がけた『知らなくていいコト』(日本テレビ系)で道ならぬ恋に落ちる二人を演じた吉高と柄本の相性の良さも物語を盛り上げた大きな要因だ。大人の女性としての魅力もありながら、どこかに天真爛漫な少女性も残している吉高と、包容力に溢れていて、独特の色気を感じさせる柄本。二人が作り出す甘くて切ない空気感に陶酔させられた。

 そして、まひろと道長の転機となったのが、直秀(毎熊克哉)の死だ。どちらにとっても大切な存在だった直秀が無残な形で殺されたことをきっかけに、二人は「より良き世をつくる」という共通の目的を持つソウルメイトとなる。

 民のための政を成すべく、元々は距離を置いていた権力闘争に身を投じていく道長と、やがては彰子(見上愛)の女房として影で道長を支えつつ、人々の心を慰める物語を紡ぐまひろ。

 そんな二人を取り巻いていたのが、人間味あふれる登場人物たちだ。和歌や漢籍に通じる文人であるが、政治的駆け引きが苦手で出世のスピードは遅かったまひろの父・為時(岸谷五朗)、公卿たちに翻弄されない強い帝になってほしいという思いから、息子である一条天皇(塩野瑛久)を操り人形にしてしまった詮子(吉田羊)、その孤独から自分を救ってくれた中宮・定子(高畑充希)を愛するがゆえに、政務が疎かになってしまう一条天皇(塩野瑛久)など、本作のキャラクターは一人として完璧な人などいなかった。

 だからこそ、私たちは歴史上の人物でしかなかった彼らに心寄せることができたのではないだろうか。

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