長きに渡って語り継がれていく傑作に
はんにゃの金田哲が演じた藤原斉信も印象深い。まあ、その色白で涼やかな顔立ちが平安という時代に映えること。実に見目麗しく、道長、公任(町田啓太)、行成(渡辺大知)とともに平安貴族の“F4”と呼ばれた。出世欲が強く、女性に対しても積極的な斉信だが、それが全く鼻につかない。金田の飄々とした感じとユーモアで、クラスに一人はいそうな友達にしたいキャラに仕上がっていた。
そんなおかしみのある彼らを見ていると、「人には光もあれば影もあります。人とはそういう生き物なのです。そして複雑であればあるほど魅力があるのです」という第29回におけるまひろの台詞を思い出す。
人妻の空蝉に夜這いをかけるも、直前で逃げられ、間違えたままに空蝉の義理の娘と一夜を共にする、ちょっぴりふふっと笑みが溢れる光る君の情けない部分も描いたまひろ。そのスタンスは大石にも共通していて、史実を踏まえながらもオリジナル要素を盛り込み、様々な角度から、それぞれのキャラクターを立体的に描き出した。
「藤原」姓ばかりで学生時代は覚えるのに一苦労だったが、本作では自然と名前を覚えられたのは一人ひとりのキャラが立っていたから。そのため、SNSでも「興味のなかった平安時代が好きになった」「もう一度、勉強し直したい」という声が多数上がっていた。物語は一旦幕を閉じたが、千年を超えるベストセラー『源氏物語』のように、本作も長きに渡って語り継がれていくのではないだろうか。
(文・苫とり子)
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