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モラハラ旦那を演じた田中圭

『わたしの宝物』第6話 ©フジテレビ
『わたしの宝物』第6話 ©フジテレビ

 宏樹を演じる田中圭も、回を追うごとにSNSでの反響が変わっていったのも印象深い。疲れている夫を気遣って笑顔で迎える美羽に、挨拶一つ返さない。それどころか何ら非のない美羽に八つ当たりする始末。初回では誰もが美羽の味方をしたであろう、憎きモラハラ夫だった宏樹。

 ところが第2話では、宏樹が仕事で強烈なストレスを抱えていたこと、美羽の母の入院費用を負担していることなど、宏樹にのしかかる重圧が明らかになった。

 北村一輝が演じる喫茶店のマスター・浅岡から「逃げちゃえば?」と声を掛けられてからの変化も印象的で、最初はガチガチに凝り固まっていて、微笑み方すらも忘れていた様子の宏樹だが、陽気な浅岡の言葉によって少しずつ心がほぐれていく過程を、絶妙な表情の変化で見せた。たった15分。宏樹が自分のためだけに使った時間がどれほど貴重だったか…。

 栞の誕生から徐々にいいパパへと変貌していくのだが、美羽の後輩・真琴(恒松祐里)によって美羽の秘密が暴かれ、修羅場へと突き落とされてしまう。栞の誕生から、入水を決意するに至るまで、不器用ながらも踏ん張ってきた宏樹。その苦悩は、栞を抱きかかえ少し丸めた背中からも痛いほどに伝わってきた。

「生まれ変わったら本物の親子になれるかな…」と浅岡にこぼした宏樹。脚が水に浸かり、冷たさを感じるのと対照的に、抱きかかえる栞の温もりを感じて踏みとどまった…そんな大きく揺れ動く心境を想像させた。大きな仕事を任されプレッシャーを感じていたサラリーマン像の説得力もあれば、妻の裏切りを知り、やり場のない怒り…口数はそう多くはなかったが、場面ごとに印象を残す芝居が光っていた。

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