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玲央「心の底から願ってみたい」
端島の輝きを羨む現代人

『海に眠るダイヤモンド』最終話 ©TBSスパークル/TBS
『海に眠るダイヤモンド』最終話 ©TBSスパークル/TBS

 何より没入感を与えてくれたのは、大掛かりなセットとVFX技術で再現された活気溢れる端島の姿。そしてビジュアル面もさることながら、当時の資料や元島民への聞き取りなどに基づいて忠実に描かれた人々の暮らしだ。

 当時、炭鉱で栄えた端島には新宿駅ほどの広さに約5000人もの人々が集まって暮らしていた。そのほとんどを占めていた鉱員の給料は危険を伴う仕事ゆえに高く、彼らはよく働き、よく遊ぶ。これから日本はどんどん良くなるという希望もあり、外勤として鉱員たちをまとめる鉄平の目はキラキラと輝いていた。

 対して、玲央の目に光はない。父親の名前も顔も知らずに育ち、ホストの世界で騙し騙されながら生きてきた玲央。そんな彼の「俺、もっとこう、思いっきり笑って、誰かのために泣いたり、幸せになってほしいって祈ったり、石炭が出てきてほしいって、心の底から願ってみたいんですよ」という台詞が印象的だった。それはきっと、現代を生きる誰もがどこかで願っていること。

 本当はみんなが幸せになれる道を探れたらいい。だけど、そんな余裕なんてないというのが多くの人の本音ではないだろうか。税金や物の値段ばかりが上がり、働けど働けど楽にならず、世界全体がどんどん不安定になって、再び戦争の時代に突入するのではないかという不安もある。だから、つい自分さえ良ければいいという思考に陥ってしまうけれど、「生きてて楽しいんすか?」と聞かれたら正直自信がない。

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