1人でも、独りにならないことはできる
誰かと一緒にいても独りだと感じて、寂しくなることもある。家族がいても、友達がいても、パートナーがいても、1つにはなれないから、寂しさからは完全に逃れることができない。
私たちはどこまでいっても1人だ。だけど、1人でも、独りにならないことはできる。葉子のように、他人や社会と繋がって。そのためには、対話が必要なのかもしれない。言わなくても分かってもらおうとするのではなく、しっかり相手と向き合って、話して、互いを理解する。
それで葉子と目黒のように関係性が壊れて、時を経てまた笑い合えることもあれば、そのままになることもある。でも、過去の栄光に縋っている作家の二階堂(リリーフランキー)に葉子が「あれは佳作です。素晴らしいけど傑作ではありません」とはっきり告げたことで、また新たな傑作が生まれるかもしれない。
保線員の潮が毎年冬に交換し、段差が滑らかになったレールの上を走る電車が人々を行きたい場所、会いたい人のもとへと運ぶ。おせち料理は大変だからと、代わりに渋谷家のお正月の定番となったちらし寿司が、ユンスと都子のお店のスペシャルメニューになる。
都子が韓国へ行き、潮が家を出て、1人になった葉子の独白「小さな、私たちの小さな営みは、どこへ繋がっていくのでしょう。真新しい滑らかなレールが運んでくれることでしょう。連綿と続く私たちの営みを全て乗せて。いつかの遠い彼方まで」は、きっとそういうことなのではないだろうか。