人の背景を思いやる鴻田(奈緒)の強み

『東京サラダボウル』 第3話 ©NHK
『東京サラダボウル』第3話 ©NHK

 一方の鴻田は、オムツばかりが万引きの対象とされるドラッグストアに、店員として潜入していた。人当たりもよく、商品のこともしっかり把握している鴻田は、接客も完璧だ。

 そこで鴻田は、オムツ売り場の前に長く滞在する男・ワン(張翰)と接触する。万引き犯かと思われたが、ワンは買うべきオムツのサイズを迷っているだけだった。それを知るやいなや、鴻田は満面の笑みで、おすすめのオムツを差し出した。

 この偏見のなさ、それでいて、人の背景を思いやる力は、鴻田の強みだ。

 15歳まで中国で暮らしていたという有木野に、瞬発的に「日本の学校に移るの大変だったでしょ」という返しはさすがだった。両親が日本人で、外国で暮らしていたからといって、2か国語を完璧に話せるとは限らない。

 かつて、自分が帰国子女の友人たちを羨ましがってしまったことを猛省した。その裏側にあったはずの努力を、もっと想像するべきだった。

 そんな言葉を嫌味なくさらっと表現するのが巧い奈緒と、相変わらずポーカーフェイスではあれど、たしかに感情が動いたことが伝わる絶妙な芝居を見せる松田龍平。改めて、鴻田と有木野のタッグは、この2人だからこそと思わされる名シーンだった。

 しかし、鴻田が親身になって相談に乗ったワンは、子どもを育てる父親ではなかった。オムツを持って帰った家には、タバコを吸う女と、誘拐された俊がいた。

 にわかに繋がりが見えてくる、オムツの万引き、誘拐事件、戸籍売買――。この町で、一体何が起きているのか。真相が明かされる次回が待ち遠しい。

(文・あまのさき)

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