心を揺さぶられる名言の数々

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1話 ©NHK

 とはいえ、いくら歌麿や写楽を世に出した人メディア王とて、彼が活躍したのは、大河のお約束であるチャンバラ、つまり「戦」がない時代。武力ではなく、芸術で世の中を動かすストーリーとなる。

 しかも自分が描くのではなく、プロデュースする立場だ。寛政の改革による出版統制、言論統制は見どころになるだろうが、それにしても、吉原育ちで死因は脚気。大河の主人公にするには難しいのでは…。

 2023年4月に「2025年の大河の主役は蔦屋重三郎」と発表されたときは勝手に心配したものだ。
 
 しかし蓋を開けてみれば、毎回、心を揺さぶられるセリフがある。たとえば第1話、回想で、幼い蔦重が、親がいながら捨てられた理由がわからないと落ち込むシーン。遊女の朝顔(愛希れいか)は彼にこう言葉をかける。

「どうせわからんのであれば、とびっきり楽しい理由を考えてはいかが?」

 笑顔と優しい声は、胸に沁みた。

 さらには、22歳になり、吉原に人が来なくなっていることを危惧した蔦重が、田沼意次(渡辺謙)に訴えるシーン。

「では、おまえはしているのか? 何か人を呼ぶ工夫を」

という田沼意次のド直球な指摘にドキッ。現状を嘆いて、周りのせいにばかりしている今の私の胸にも突き刺さった。

 ああ、名言だらけで気が抜けない!

1 2 3 4 5 6 7
error: Content is protected !!