ミスター大河・石坂浩二にビックリ
ああ、お腹がすいてきた。話題を変えよう。戦ではなく文化をメインテーマにした『べらぼう』に、昔ながらの大河ファンは物足りなさを感じるかもしれない。ただ、徳川家パートで、大河のもう1つの王道「お家騒動」はガッチリ楽しめる。
特に松平武元を演じる石坂浩二に注目。顔から落ちそうな眉、汗がたまりそうな目の下のたるみ。渡辺謙が演じる田沼意次に向けて言う、「黙れ黙れ、黙れ!」のねちっこさ。さすが大河出演6作、主演3作というミスター大河。彼が出るだけで大河臭が濃厚になる!
そしてもう1人、新たに大河ドラマの常連になる予感がするのが一橋治済を演じる生田斗真。『鎌倉殿の13人』(2022)に続き、イヤな演技が冴え渡っている。まさに黒生田。整っている顔を存分に生かし性格の悪さを醸し出してくるので、サイコパス風味が出てものすごく不気味だ。
この黒生田に絡むのが、田安賢丸役を演じる寺田心。天才子役と呼ばれた彼ももう16才か、大人になったなあ…、と感慨深く見ていたが、田安賢丸といえば、のちの松平定信。
寛政の改革で出版規制に乗り出し、蔦重たちに大きな打撃を与える人なのである。おいおい心君、ブックオフで店長やってたじゃん!
いや、慌てるな。先走るなんて野暮の極み。とりあえずは、蔦重が夢を追い、絵師や戯作者たちと出会っていく様を楽しもう。
様々な才能に助けられ、すべきことを見つけていく蔦重の姿は、モノづくりの純粋な気持ちを思い出させてくれる。
「なんかすげぇ楽しかったなあ」
1つやり終わるごとに、そう思えたあの頃を。
(文・田中稲)
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