良い探偵には、良い悪役がつきもの
2つ目の見どころは主犯であるライリー櫻井という人物だ。
魅力的な探偵役には、同じくらい魅力的な悪役が必須。今回の詐欺集団を束ねるライリー櫻井は、その意味で正しく、魅力溢れるキャラクターだった。
「ハニーです」などと嘯き、意識高い系かのような横文字を駆使して、映画『素晴らしき嘘つき野郎』(『相棒』世界に存在する架空の映画)の主人公が着用していたスーツを着こなすジェントルマン。
そんな男が仲間を率いて劇場型コンサル詐欺を仕掛ける。彼らの手法は、“夢を与える→金を与える→仲間を与える→全てを奪う”という一連の流れなのだが、そのスムーズかつ鮮やかな手口は、院長が騙されてしまうのも納得だ。劇場型の手口といい、主犯の名前が横文字なことといい、これは“相棒版『地面師たち』”と言っても過言ではないだろう。
さらにライリー櫻井は、悪役としてだけてなく、人間的魅力も兼ね備えていた。幼い頃にスマイリーというロマンス詐欺師に命を救われたライリー。その後は、彼に師事し、詐欺師として育てられた。
そして師のように詐欺を行いながら、経済的困窮者、仲間に裏切られ財産を失った者、ネグレクト被害者など昔の自分のような社会的弱者を仲間に引き入れたり純粋に支援したりと、損得勘定無い善的行動も取っている。
こういった1人の人間として深みを持たせた人物だからこそ、相対する杉下右京と、彼をサポートする亀山たちも活きてくる。
6年ぶりの真野脚本だったが、進化しながらもかつてと変わらぬ良さが確かにあった。
次回、第13話も真野による脚本で、ゲストは和泉元彌だ。通常の予告よりも告知に気合が入っており、和泉氏のコメントでも「厳しい目で観て欲しい」というほどハードルを上げている。
今回とは打って変わったハードな作品になりそうなので、心して視聴したいと思う。
(文・Naoki)
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