己を奮い立たせる心麦(広瀬すず)に胸が締め付けられる…。
この第1話で特に印象的だったのが、これから相棒となる心麦と松風の掛け合いだ。春生の意志に従い、松風が幼馴染の波佐見(森崎ウィン)と営む法律事務所を訪れた心麦。
しかし、松風は春生と面識がなく、手紙の内容を全く信じてくれない。心麦は松風に言いくるめられ、怒って事務所を飛び出す。
偏屈で弁が立ち、意外にも甘党の法曹家…。どうしても、直近で松山がNHK連続テレビ小説『虎に翼』(2024)の桂場を頭に浮かべてしまうが、松風の方が軽やかでちゃんと別人に見える、松山の演じ分けは流石だ。
視聴者が「この人は信じられそうだ」と思える人間としての温かさもある。松風は何も理由がなく、心麦の依頼を拒んだわけではない。
もしも春生の手紙が何者かによる偽装で、本当に友哉が犯人だったとしたら、心麦は父親が殺した人間を野に放ってしまう可能性がある。そのリスクも含め、まだ大学生である心麦が背負うものの大きさを松風は案じているのだ。彼の言葉は手厳しいが、そこには愛がある。
しかし、松風が思っている以上に心麦は強い。母親に続いて、父親まで亡くし、辛くないはずはないのだ。葬儀を終えて一人きりの部屋に帰り、「泣くな…泣くな…」と言いながら唇を震わすシーンには広瀬の名演も相まって胸が締め付けられた。だが、そこから己を奮い立たせ、いつでも自分の味方だった春生を信じ、前を向く心麦は純粋に応援したくなる。