実子を誘拐されて日本に来たワン(張翰)
福建省出身で、10年前に技能実習生として日本にやって来たワンは、在留期間をとっくに過ぎていた。取り調べで黙秘を貫くワンを心配する鴻田。このままだと、俊を連れていたワンは、未成年者略取・誘拐罪で起訴されてしまう。だが、俊の名前を知らなかったワンが犯人だとは思えない。
ヒントになったのは、鴻田が子どもの名前を尋ねたときに、愛おしそうに口にした「ユーハン」という名前だ。鴻田は通訳人たちにも協力してもらい、中国の行方不明者が掲載されている掲示板からユーハンを探そうと試みる。
清宮(イモトアヤコ)、黒須(関口メンディー)、今井(武田玲奈)に加え、有木野も「砂漠から針を探そうとするようなもの」と言いつつ協力してくれる。東新宿署国際捜査係のなかでは異端児扱いされていても、鴻田に人望があることが伺える。
そして、ついに掲示板にユーハンが載っているのを見つけ出す。ワンは、息子のユーハンを探す資金を稼ぐために日本にやって来たのだった。時間にして、10年。息子がいなくなり、お金を稼ぐために妻とも離れてたった1人で出稼ぎに来た。一体どんな気持ちだっただろう。ワンは、「妻はまだ探している」と言った。顔もわからないが、ワンの妻と、俊がいなくなってからの取り乱したユキの姿を重ねてしまう。
突然子どもを奪われる辛さも、苦しみも、恐怖も、全部痛いほど知っているワンは、出発を告げに来たボランティアの態度を見て、自分が数日預かった子どもの身を案じたのだろう。
警察に駆け込みはしたものの、パスポートを無償で提供してくれたボランティアを裏切れないというワンに、鴻田はボランティアが最終的にはワンたち3人を売ろうとしていた可能性があることを告げる。鴻田が流す涙は、哀しみと同情が濃いが、静かな怒りも感じた。