少年のようにキラキラした蔦重の目
これまでの彼の出演作のセリフにもあったけれど、俳優の“イケメン扱い”はいかがなものかと常々思っている。作品として見たいのはそこではない。美しさが見どころになることもあるけれど、敢えて触れるのではなく、演技に視点を向けたい。そうは言っても…私はおそらく横浜の顔面を追うのだろうと思っていたら、全くそんなことはなかった。画面へ最初に押し出てくるのは、蔦重の熱量。爽やかさはなく、どちらかというと熱苦しい男。第二話でも男色家の平賀源内(安田顕)が「よく見ると、いい男」と言っていたように、顔の良さは後手に回っている。第三話で、吉原の入銀本『一目千本 華すまひ』が完成した時に、蔦重が熱量を発散するようにこう言った。
「なんかすげぇ楽しかったなあ。(中略)こんな楽しいことが世の中にあって、俺の人生にあったんだって。なんかもう、夢の中にいるみてえだ」
第四話でも遊女たちが呉服屋の売りたい着物を着た錦絵を使って、二冊目を作ろうとひらめく。着物屋にスポンサーとなってもらって、費用のかかる錦絵の制作費を捻出、遊女は現代で言うインフルエンサーだ。すぐに動き出す蔦重の目は少年のようにキラキラしていた。この熱量こそ、見どころである。