前向きな結末であるほど”レジリエンス”という言葉が刺さる…。

『相棒 season23』第13話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第13話 ©テレビ朝日

「加害者たちを罪に問うことは出来ても、釣り合う罰はない」。そう考えた平井は、莉央の描いた漫画の通りに殺人を実行した。母親に近づいて信頼を得たあとに、自分が犯人だと告げるという漫画の展開をなぞるために、彩子に協力した。

 しかし5年の月日が過ぎ、彩子が3人での時間を幸福に感じていたのと同じく、莉央も平井も居心地の良さを感じていた。それどころか、平井は息子を殺しておきながら、あろうことか彩子のことを愛してしまった。皮肉にも、レジリエンスは平井自身にも発揮されたのだ。

 莉央の復讐に生きながらも彩子を愛してしまう。自己矛盾に引き裂かれた平井は、嘘の動機で自首することで、復讐を遂げると同時に彩子との約束を守る。それしか方法が無かったと供述する。

 しかし、杉下右京には通じない。

 平井が復讐を実行しなければ、莉央に罪悪感を抱かせることもなく、彩子を傷つけることもなかった。1人の男の身勝手な正義と倫理が、2人の女性の人生を破壊したのだと突き付ける。

 その後、莉央は再度漫画を目指すことで、事件は前向きに終わったが、前向きであるほどまた“レジリエンス”という言葉を想起させる。

 平井は、一体なんの為、誰の為に罪を犯したのかも分からなくなってしまう。

 次回はそんな陰鬱な気分を吹き飛ばすかのように、ファンの中でも人気の高い中園参事官(小野了)メイン回だ。

 中園は普段でこそ部長の腰巾着YESマンだが、その裏では正義感を持ち合わせ特命係を評価し、更に指揮官としても結構有能で少し腹黒いという、魅力しかない名キャラクターだ。

 pre season1からの出演故に登場回数は多いが、『相棒』の長い歴史の中でも彼のメイン回は無い。これは本当に貴重かつ希少な機会なので、十全に堪能しようかと思う。

(文・Naoki)

TVer(ティーバー)での視聴はこちら。

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【了】

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