「誰かを踏みつけるような表現をしたくない」
登場人物が自分の性自認を打ち明けるシーンについて、プロデューサーの上野(穂志もえか)が「相手とそこまでの関係がまだ出来上がっていない」と主張。それに対し、ディレクターの木山(石田卓也)たちが「そんなこと言い出したら物語を展開させられない」と反論する。上野のことを“コンプラ女王”と称し、めんどくさいとでも言いたげな雰囲気だ。
最終的には炎上回避の観点から脚本を見直すことになるが、上野の側にはモヤっとした感情を残すことになった。この会議のシーンを見ていても、コンプラに対する意識は高まっているものの、何のために必要なのか、ということがおざなりになっている気がする。
上野は「私は誰かを踏みつけるような表現をしたくないだけです」と言っていた。たかがドラマ、と思うかもしれないが、登場人物と同じ状況にいる人が救われることもあれば、傷つくこともある。
そのことに本作のスタッフは非常に自覚的で、上野のように「誰かを踏みつけるような表現をしたくない」という気持ちで制作にあたっていることが、冒頭のカウンセラーの台詞や、その後の展開にも表れていた。