清美(市川実日子)、三度目の正直
そこへ安川が「30分以内に直らなかったら全額返金しろ」とクレームを言いにやってくる。安川を演じているのは、前述のとおり吉村界人だ。
ねちねちと逃げ道を塞ぐように問い詰めていくクレーマーの解像度の高さと、吉村演じる安川が醸し出す、きっとこの人が強い立場のままでは終わらないんだろうなという残念な感じにワクワクする。手が付けられそうもない凶暴な役も、蓋を開けたらビビりという役もハマるから、俳優・吉村界人は面白い。牙を剥き出してほしくもあるし、それを抜かれたところも見たくなる。
安川が水を得た魚のようになったことで火が付いた清美。高橋さんにも頼れないならと、自力で給湯器を直そうとする。
ドレッシングの賭けにも一一度給湯器の電源を落とすという賭けにも負けた清美だったが、ゴミの除去というこの日三度目の正直で、見事勝利。30分以内にお湯を出すことに成功した。全額返金の要求が通らず意気消沈する安川の姿こそ見られなかったが、バケツ片手にガッツボーズをして給湯器の前を立ち去る清美の後ろ姿がかっこよすぎた。
これまで数々の見えない手柄を立ててきた高橋さんも、今回は見せ場なしか…と思ったのもつかの間、ホテルに泊まり込んで勉強漬けの日々を送っていた受験生の上村(萩原護)が客室に忘れていった受験票を走って届けることに。それだけでなく、道中、コンビニ強盗を捕まえてしまうのだから、高橋さんはやっぱりすごい。
しかも、そのコンビニ強盗こそがあやにゃんの電動自転車を盗んだ犯人で、高橋さんによって剛速球と化したカラーボールで、頭から水たまりに突っ込ませるというおまけつき。あやにゃんのなにげない(?)暴言すらも鮮やかに回収していくから、バカリズム作品はほんの些細な一言にまで耳を傾けたくなる。