大人にこそ耳が痛い問題提起

『御上先生』第3話 ©TBS
『御上先生』第3話 ©TBS

 話によると、東雲の父の教材は、内容面で特に問題はなかったという。中学校の学習指導要領に則っており、富永によれば「こんな教科書で勉強していたら楽しかっただろうなっていうすごくいい教材」だ。

 問題があるとすれば、教科書検定を合格していなかったこと。それだけと片付けるべきか、それこそが大きな問題と見るかは非常に難しいところだが、気づけばわかりづらいと評判の学習指導要領と向き合っており、これが考えることそのものだったのかと理解させられる。

 是枝(吉岡里帆)は「いい問題提起だったよ」と声をかける。問題提起があって初めて物事は変わり始める。我慢することでも、文句を言うだけでも変わらない。問題を他人と共有し、課題として投げかけることで前へと進んでいくのだ。

『御上先生』は学園ドラマだが、生徒を見ていると「まだまだ子供だね」という感情よりも耳が痛いという思いをすることのほうが個人的には多い。

 帰国子女の倉吉(影山優佳)が話した「本音と建前」にしてもそうだ。奥ゆかしさは日本人の美徳かもしれないが、「言いたいことほど胸にしまっておく」ようになってしまう癖は果たして正しいのだろうか。

 そして、社会に出てほとんど無意識的に本心を明かさなくなっている自分は若い世代に誇れる人間であるのだろうか。時に人と意見が衝突することも恐れず、ディベートを行えるタイプの人間でありたいと思うのは傲慢だろうか。

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