奥平大兼の静かな風格
次世代を担う若手俳優たちが演じる生徒のなかでも、一際目立っているのが神崎拓斗(奥平大兼)だろう。
第1話から御上先生に要注意人物だと名指しされたように、報道部の部長でもある神崎は不倫した教師の密会をスクープとして校内新聞に掲載するなど、野心を実現するための行動力と強気な姿勢を崩さない。
そんな危うさを秘めた神崎を演じる奥平大兼は、15歳時に演技未経験で臨んだ映画『MOTHER マザー』(2020)で鮮烈なデビューを飾った。その後も、話題作への出演を重ね、年齢に見合わない風格をまとっているように感じる。
彼の演技で特筆すべきなのは、静かな風格。決して声を荒げているわけではないし、怒りの表情を浮かべているわけでもない。それなのに奥平の演技からは、のどの奥を締めつけられているような、目に見えて現れない風格がある。
第1話、教室を出ていくタイミングで高梨晋太郎(青山凌大)から文句をつけられた際に「それ、俺のせいじゃないよね」と返したときの声音には自信がみなぎっており、説得力があった。
一方で、第2話の張り詰めた空気のなかで行われた意見交換の場面では、年相応の緊張した面持ちを見せる。1つひとつの言葉を絞りだすように「でもあのときの俺は、冴島先生を食おうとするハゲワシの正体を見ようとしなかった。だから、これからでも俺は絶対それを捕まえる」と言い放つ場面は、間違いなく本作のハイライトになるだろう。