”人間の原動力”が本作の要か

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第5話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第5話 ©NHK

 唐丸も蔦重との約束を胸に、今もどこかで生きているのではないだろうか。

 唐丸の正体については、10ヶ月の間に140点を超える作品を生み出すも、忽然と姿を消した謎の絵師・東洲斎写楽とする説と、正確な出生年や出生地が不明で、のちに蔦重の養子先の名字である喜多川性を名乗っていること、名前の語感が唐丸と似ていることから喜多川歌麿とする説が、視聴者からは上がっている。いつか再会を果たした蔦重と唐丸がプロデューサーと絵師としてタッグを組み、美術界に旋風を巻き起こす…考えただけでもワクワクが止まらない。

 一方、源内と田沼意次(渡辺謙)は日本が開国した後の希望的観測を挙げ連ねる。ところが、ひとしきり盛り上がった後、「まあ、そういうわけにもいかぬな」「ええ、まことに国を開くなどすれば、あっという間に属国となって終わりましょう」と肩を落とす2人。人生の酸いも甘いも嚼み分けてきた彼らは、現実の厳しさを知っているのだ。

 それでも、想像するだけで心が沸き立つような感覚が人間の原動力になること、その原動力が社会を変えていくことが、この第5話では強調されていた。きっとそれが本作の要にもなってくるのだろう。そういう意味では、1つの区切りとなる重要な回になったように思う。

 中津川鉱山での事故をめぐり、出資者たちに人質に取られた源内の商売仲間・平秩東作(木村了)や、日本橋の中心地に店を構える書物問屋の須原屋(里見浩太朗)など、今後物語に大きく関わってきそうな新たなキャラクターも登場。版元としての独立を目指す蔦重の見習い編(?)に注目していきたい。

(文・苫とり子)

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【了】

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