私刑に走りがちな社会への警鐘

『相棒 season23』第14話 ©テレビ朝日
『相棒 season23』第14話 ©テレビ朝日

 今回の見所は2つ。

 1つ目は、”不当な方法による復讐”だ。

 誘拐犯の正体は”ジャスティーズ”ではなく、彼ら過去に生み出した冤罪により職を失った小宮山(イワゴウサトシ)という男だった。小宮山は、”ジャスティーズ”は勿論、自身の無実を訴えてもすぐに解放してくれない警察に対しても、強い恨みを抱いていた。

 両者に復讐するため”ジャスティーズ”の名前を借りて、警察幹部である中園を誘拐し、さらには江梨子との不倫疑惑を認めさせて、私的に断罪しようとしたのである。

 しかし不倫の事実など無い中園は、懺悔を拒否。最後は、救出に来た亀山が、「今お前が中園にやっている事は”ジャスティーズ”と同じ」だと小宮山に突きつける。

 “ジャスティーズ”は世直し活動、小宮山は正当性のある復讐という正義を持って、事件を引き起こした。同じように、昨今は司法による罰よりも被害者側が週刊誌や暴露系インフルエンサーの力を借りて私刑に走る傾向があり、今作はその危うさを描いたものだと言える。

 S12でも右京は「不当な目にあった時に不当な方法による復讐をすると、最初に受けた不当を誰も不当だと思わなくなってしまう。やっぱりそういう人間なんだとアナタが思われてしまう」という趣旨の金言を残している。

 それから10年以上が経つが、いまだ不当な復讐が無くならない事にやるせなさを覚える。

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