大河ドラマ『べらぼう』第6話考察&感想。片岡愛之助の清濁併せ吞む芝居に魅せられた…同じくらい”本物”を見せつけた人物は?【ネタバレ】

text by 苫とり子

横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)が現在放送中。貸本屋からはじまり「江戸のメディア王」にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く。今回は、第6話の物語を振り返るレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】

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【著者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

暖簾分けを狙い、鱗形屋(片岡愛之助)への奉公がスタート!

『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第6話 ©NHK
『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第6話 ©NHK

 鱗形屋(片岡愛之助)に奉公し、暖簾分けで本屋になる道を模索することにした蔦重(横浜流星)。NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第6回「鱗剥がれた『節用集』」では、鱗形屋と新たな青本作りを進めていた蔦重に思わぬ事態が訪れる。

 青本とは、浄瑠璃や歌舞伎の昔からよく知られた話に挿絵を加えたもの。現代で言うところのコミカライズ本に近いものなのかもしれない。それを読書家の花の井(小芝風花)もめっきり本を読まなくなった次郎兵衛(中村蒼)も、口を揃えて「つまらない」と言う。

 派手に当たる入銀本を考えてほしいと鱗形屋に頼まれ、企画を練っていた蔦重が目をつけたのは、そこ。普通なら「つまらない」というイメージが付いたものに手を出したくならない。

 しかし、さすが頭の柔らかい人間は一味違う。発想を転換し、みんなに「つまらない」と言われる青本が「面白い」となったら、話題になるのではないか?と考えた蔦重はさっそく鱗形屋に話を持ちかけるのだった。

 でも、よく考えると、青本も広く取り扱っている鱗形屋にとっては面白い話じゃない。ましてや密かにライバル視している蔦重に、青本がつまらないから面白くしましょう…なんて言われたら、つい反論したくなるのが人間というものだろう。ところが、鱗形屋は蔦重の言葉をしかと受け止め、「2人でとびっきり活きのいい話を考えてみようじゃねえかよ!」と話に乗るのだ。

 そこで蔦重はネタ集めに吉原へ。このところ、吉原でもっぱら話題となってたのは「金々野郎」と呼ばれる男たちのことだった。慣れない遊郭で通を気取って見せるが、付け焼き刃なのですぐにボロが出る。流行りの裾の長い着物に足を取られて転んだり、花魁と女郎を間違えて知ったかぶりがバレたり、何とも滑稽で愛おしい。

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