亡き母・有紀子(安藤聖)の覚悟

『リラの花咲くけものみち』 第2話 ©NHK
『リラの花咲くけものみち』 第2話 ©NHK

 獣医師にも救える命と、救えない命がある。時には「どちらを生かすか」という残酷な選択を迫られることもあるだろう。

 けれど、よく考えてみれば、私たちは肉や魚など普段から命を頂いている。あの母馬は子馬の命と引き換えに生き延びた。聡里が保護した犬はすっかり元気になり、病気やケガをした犬に血を分けてあげる供血犬になるそうだ。それぞれ「かわいそう」と感じるかどうかは人によって異なる。

 聡里の亡き母・有紀子(安藤聖)は生まれつき心臓に疾患があり、20歳まで生きられないかもしれないと医師に言われていたという。それでも強く生き、結婚して聡里を妊娠した。

 母親になることが夢だったそうだ。だから、「今まで病気のために色んなことを我慢してきた。今までの我慢は全部、強くなるための時間」と周囲の反対を押し切って出産に挑み、聡里が生まれた。

 健康であっても出産はリスクを伴うもので、母親はいつだって命懸けで子供を産む。私たちは絶えず、生かされているのだ。そのことに感謝を持つことが、何よりも大切なのかもしれない。

「尊い命に報いるために、かわいそうを超える真摯な決意をもって、私たちは一生懸命学ばさせていただく」

 命と向き合う覚悟を決め、また自信を失くしては悩み、仲間に励まされて立ち直り。そうやって同じことを繰り返しながら少しずつ成長していく聡里の日々はあっという間に過ぎ去っていった。

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