生え際の白髪を隠さない永作博美に勇気をもらう
インフルエンサーとして人気の真奈美は、葵とは真逆のタイプ。いつも笑顔で、おおらかで、大阪のおばちゃん気質を体現したような女性だ。教室の生徒たちが心の病を抱えて、お菓子作りをしていることも彼女が表現するとこんなふうになる。
「(お菓子教室の関係性が)無責任だからいいのよ。気楽でしょ。この時、この場所だけで会う人。言いたいことを気軽に言えて、嫌になったら会わなければいい。ここはサードプレイス」
「ここではしがらみなんか忘れちゃって、脱力系の自分でいていいの」
なるほど、と小さく納得した。ずっと張り詰めていた葵の何かが、真奈美によってほぐされていく。この作品にはタイトルが匂わせるように、毎夜、おいしそうなスイーツがテロのように登場してくる。この甘みと、お菓子作りの繊細な作業工程がくすんだ気持ちを優しくしていく。真奈美の初登場のシーンは「なんだかパンチの効いた辛味のある人だ」と思ったけれど、彼女は実は甘味だった。
真奈美を演じている永作博美ご本人もいい。とても54歳には見えないけれど、老いを隠していないことをこのドラマで見つけた。真奈美の髪の毛の生え際に白髪があったのだ。老けたように見せる演出ではなく、あれは本物の白髪だと言い切れる。なぜかといえば私の頭部にも同じような白髪が生えているからだ。今ならメイクで簡単に消すこともできるのに、それを敢えてせず、そのまま役に入りこんでいる。真奈美役もそうだけど、役に説得力が増している。まだけしていいイメージではない白髪だけど、彼女(永作であり、真奈美であり)を見ていると、なんだか誇らしく思えてきそうだ。