石坂浩二VS渡辺謙!
松平武元の無茶振り「日光社参」とは
『べらぼう』もう一つの見どころ、徳川のお家争いもヒートアップ。石坂浩二演じる松平武元の、田沼意次(渡辺謙)イビリが右肩上がりでえげつない。
第6話では、明和九年の大火で激減した江戸城の御金蔵を水準に戻した意次に対し、感心した風に見せかけておいての、「金への執念に感服いたす」。ヤな言い方! 石坂浩二の糸を引くようなネチネチのセリフ回しは、ある意味清々しいほど。
さらに武元は「日光社参」を提案するのだ。
「日光社参」は、いわば歴代将軍の墓参りなのだが、時代にもよるが、だいたい十万人以上の人数が参加し、江戸と日光間を8泊9日くらいで往復する大パレードである。
とんでもない費用と労力がかかるのは明らか。やっと財政を立て直したのに! 田沼意次は大反対したが家治は行くことを決め、再び武元の意次イビリが炸裂する。「馬に乗れる家臣はいるのか? ふぉっふぉっふぉ」。キーッ!
田沼家のシーンで武元は「白まゆげ」と陰口をたたかれていたが、こりゃもうしょうがない。意次は「白まゆ毛のバーカ!バーカ!」と叫びながら障子を破るくらいしてもいい。届かぬ願いだが、うまくストレス解消してほしいと同情した。
家治の日光社参の費用は、当時の幕府の年間収入の約7分の1、約22万3000両かかったとされている。ただ、この日光社参成功により意次は大出世するので、彼にとっては結果オーライだったかもしれないが。
ちなみに、この大変な日光社参を10回も行ったツワモノが、家康超リスペクトの第3代将軍家光。幕府に力のあった時代とはいえ、準備する家臣たちはグッタリしたことだろう。数を重ねるごとに「ひとりで行ってくれや…」と思ったかもしれない。