ここまで魅せきった制作陣に拍手を送りたい
右京はS15「フェイク」では、息子を失ったショックで現実世界とは別の世界を作ってしまう母親を”今は無理だ”と諦め、時間が解決してくれる事を願い終わってしまった。
そんな中で今回の「キャスリング」はそれに対してのアンサーとなっている。
「人はどんなにツラくても真実を知る事でしか前には進めない」という思いを持っている杉下右京が、奥田に現実を突きつけるのは残酷でもある。だがそれは、彼にとっても死んだ家族にとっても救いになっている。
「キャスリング」の真の意味は、奥田の心の壁を崩すという意味合いだったのである。
今回の物語は、突き詰めてしまえば”病んでしまった被害者遺族を面通しさせるように説得する”だけで済んでしまう話だ。
「人間は追い詰められると自分自身をも騙す」「人間は時に現実とは違う世界を作り出してしまう」と右京は過去に言っており、その言葉通り、今作は現実と妄想と過去と現在を行き来する複雑で変則的な構成となっている。
それを演出や脚本でここまで魅せる制作陣、更に水谷豊や佐野史郎も混乱に呑まれずに演じ切ったベテラン俳優達。
彼等に大きな拍手を送りたいと思う。
(文・Naoki)
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